加賀菊酒考まぼろしの銘酒のふるさとへ
「天下の美酒」「まぼろしの銘酒」──数々の讃辞を受けた「加賀の菊酒」には、実はわからないことが多い。その名が初めて文献に現れるのは大永七年(一五二七年)、京の公卿・山科言継の日記である。白山本宮の阿佛坊が京の公卿たちに菊酒をもたらした、と記される。
産地については江戸時代以来、鶴来説・金沢説・加賀全体説の三つが並び立ってきた。だが街道と白山七社の中心地として早くからひらけた鶴来の歴史を思えば、加賀菊酒の発生と継承の地は、白山の命水が流れるこの鶴来におくのが自然だろう。
まぼろしの銘酒のふるさと──これは鶴来しかないといえよう。
「菊姫」の名は、この菊酒と、白山比咩神社の御祭神・菊理媛にあやかり命名されたと伝えられる。私たちが受け継いでいるのは銘柄ではなく、この土地の水と、よい酒を醸しつづけた伝統そのものである。
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